自筆で作成した遺言書を法務局に預けることができる制度とはどのようなものですか。

自筆(本人の手書き)で作成した遺言書のことを、一般的に「自筆証書遺言書」と言います。自筆証書とは耳なれない言葉ですが、これは民法という法律に定められている言葉と理解してください。

従前、自筆証書遺言書を作成して自宅などで保管する場合、
①紛失、改ざん、破棄、隠匿のおそれ、
②遺言書の方式不備で無効になるおそれ、
③相続人に遺言書の存在が知られないまま遺産分割がされるおそれ、
といった問題点があると指摘されていました。

これらの問題点を解消するために、自筆証書遺言書を作成した本人が公的機関(法務局)に遺言書の保管を申請することができる制度(自筆証書遺言書保管制度)が創設され、令和2年7月10日から始まりました。

◎自筆証書遺言書保管制度の説明動画は、以下のURLをタップしてご覧ください。
(説明動画:あなたの最後の手紙を守ります~自筆証書遺言書保管制度 | 政府広報オンライン

保管制度の手続の流れを教えてください。

保管制度の概要は、下図のとおりです。

自筆証書遺言書の保管申請手続の流れとしては、

⑴ 遺言書を作成する。

⑵ 遺言書の保管申請書を作成する。

⑶ 以下の添付書類等を準備する。
 ①顔写真付きの官公署から発行された身分証明書(マイナンバーカードや運転免許証など)
 ②本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し等
 ③3900円分の収入印紙

⑷ 法務局(遺言書保管所)への事前予約をする。
 電話による予約、または、法務局手続案内予約サービスの専用ホームぺージ【法務局手続案内予約サービス】トップ:トップで予約を行う。 

⑸ 予約日時に、上記書類等を持参して法務局(遺言書保管所)に行く。 

◎自筆証書遺言書保管制度の詳細な説明、遺言書の様式等、保管申請書等の各種様式等(ダウンロードもできます)は、以下のURLをタップしてご覧ください。
(法務省ホームぺージ:自筆証書遺言書保管制度
(法務省ホームぺージ:遺言書保管申請ガイドブックguidebook_r5.pdf

まとめ

遺言書は、大きく分けると、①自筆証書遺言書、②公正証書遺言書になります。その違いは、下図のとおりです。
いずれもメリット、デメリットがありますので、どちらを選択するかを迷ったら専門家に相談されるとよいでしょう。特に、自筆証書遺言書には、民法に形式的な要件が定められています。「要件」とは、法律効果を生じさせるための条件のことです。これらが守られていない遺言は無効となってしまいますので、自筆証書遺言書を作成したら、一度専門家に見てもらうことをお勧めします。

相続でトラブルが発生するのは、遺言書がなく、相続人間で遺産分割協議をする場面が多いといえます。
たとえ仲の良い家族であっても、いざ相続が発生すれば、それぞれの事情や感情が交差し、意図せぬ争いに発展することは少なくありません。

遺言書は、亡くなる人が最後に遺せる「思いやり」のかたちともいえます。遺された家族が安心して未来に向かえるように、きちんと準備をしていくことをお勧めします。