不動産の相続はトラブルになりやすいと聞きますが、どうしてでしょうか。

不動産は、現金と異なり、簡単に分割ができないため、不動産の価格(資産価値)をどのように算出するかで相続人間でトラブルになるケースは少なくありません。

たとえば、相続財産が預金1000万円と土地建物とします。相続人である長男が土地建物の相続を希望し、二男は土地建物はいらないが、預金(現金)の相続を希望した場合に、そのとおり遺産分割協議の合意ができれば問題ありません。しかし、二男が、土地建物の資産価値の方が高いと考え、預金1000万円だけの相続では不公平だと主張することは考えられます。
二男として、仮に、土地建物の資産価値は3000万円と考えた場合、預金1000万円を相続するだけでは納得しないということです。

不動産を相続する際に、その価格(資産価値)の決め方については、法律で決まっていないのですか。

日本では、同じ土地であっても複数の価格が設定されています。その理由としては、土地の売買や税金の計算など、使用される目的ごとに、異なる主体(国や自治体など)が、土地の評価・価格設定をしているからです。

一方で、国や自治体などが定めた評価・価格設定については、相続人間で遺産分割協議をする際に、相続財産となる個別の不動産の価格(資産価値)を定める目的で作られたものではありません。言い換えると、相続人間で、国や自治体などが定めた評価・価格設定のうち、どの価格を採用して資産価値を考えてもいいですし、それらにとらわれずに、相続人間で自由に資産価値を決めてもかまわないということです(たとえば、不動産鑑定士に鑑定を依頼して資産価値を決めるなど)。

土地にかかる複数の価格について教えてください。

不動産用語で、一物四価(いちぶつよんか)といわれますが、これは読んで字のごとく、ひとつの土地(物)について、4つの異なる価格が存在することを意味します。

以下、それぞれの価格の概要等を説明します。

①時価(実勢価格)について

実際に市場で取引されている相場価格のことをいいます。個別の取引によって変動しますが、以下の国土交通省のホームページで各地域の取引価格の情報を調べることができます。タップして参照してみてください。

ホームページ:国土交通省➡不動産情報ライブラリ

②公示地価・基準地価について

公示地価は、国土交通省による全国の一定の場所(標準地)の毎年1月1日時点の価格のことをいいます。毎年3月に発表され、土地売買の指標となるものです。

基準地価は、各都道府県で評価された毎年7月1日時点の価格のことをいいます。

公示地価と基準地価の2つはほぼ同じといえます。

以下の国土交通省のホームページで各地域の公示地価の情報を調べることができます。タップして参照してみてください。

ホームページで:国土交通省➡ 地価・不動産鑑定:標準地の単位面積当たりの価格等 - 国土交通省

③路線価について

相続税や贈与税の計算のために国税庁により定められた価格のことをいいます。市街地の道路(路線)ごとに評価された毎年1月1日時点の1㎡当たりの価格のことで、毎年7月に発表されます。

以下の国税庁のホームページで各地域の路線価の情報を調べることができます。タップして参照してみてください。

ホームページ:国税庁➡財産評価基準書|国税庁

④固定資産税評価額について

市区町村(東京23区は都)が管轄内の土地について評価した価格のことをいいます。3年に一度評価替えが行われます。

固定資産税評価額は、固定資産税、登録免許税、不動産取得税の計算などで使われます。

なお、固定資産税評価額は、誰でも見れるものではありません。所有している不動産の固定資産税評価額を確認するには、毎年送られてくる納税通知書に同封された課税証明書を見るほか、市区町村役場で固定資産評価証明書の交付を受けることで知ることができます。

まとめ

上記のとおり、相続財産となる個別の不動産の価格(資産価値)の考え方が相続人間で異なると、トラブルになる可能性があることはおわかりいただけると思います。

よって、相続財産に不動産がある場合は、生前中に、相続人となる方々の考え方を聞くなどして、それに沿った遺言書を残すなど、相続人が争族人にならないような相続対策を事前に準備されることをお勧めします。