相続放棄の仕方について教えてください。

相続放棄をするには、相続人が相続開始を知った時から3か月以内に、被相続人(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述の受理の申立てを行い、申述の受理がされることが必要です。

相続放棄の申述の受理の申立ては、相続人全員がしなければならないものではなく、相続人のうちの1人だけが行ってもいいです。当然のことですが、相続放棄の申述の受理の申立てをせずに3か月を経過した各相続人は、相続を承認したことになります。

相続放棄の申述の受理の申立ての概要、申述に必要な費用、申述に必要な書類、申述書(申立書)の書式及び記載例、手続の内容に関する説明などは、裁判所のホームページに詳しく記載されています。以下に裁判所のホームページのリンク先を貼り付けましたので、参考にしてください。

裁判所ホームページリンク先➡(相続の放棄の申述 | 裁判所 (courts.go.jp)

相続放棄の手続の流れは、概ね以下のとおりです。

相続放棄申述書の記載例を添付しましたので、参考にしてくだい。必要な書類を作成及び取得したら、家庭裁判所の窓口に直接持参、または郵送して提出することも可能です。

②家庭裁判所に必要な書類等を提出した後、追加の書類の提出を求められた場合は速やかに提出しましょう。また、「照会書」(質問事項が記載されたもの)という書面が送付された場合は、それに回答を記載して送り返します。

家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届けば申述の手続は完了です。

③の通知書が届いたら、家庭裁判所に申請して、「相続放棄申述受理証明書」を取っておきましょう。この証明書は、相続放棄をしたことを証明するものであり、被相続人の借金などを債権者から督促された場合に証明書を示せば、それ以上は督促はされません。

なお、相続放棄の手続については、上記のとおり、事案によっては追加書類の提出を求められることもありますので、事前に申し立てる家庭裁判所の担当窓口に手続の流れや必要書類などを確認しておくと良いでしょう。

相続放棄をする場合の注意点はありますか。

まず相続が開始したら一般的に行うべきことから始めましょう。

①遺言書の有無や内容を確認しましょう。

②被相続人の相続財産を調べましょう。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含みます。被相続人から相続財産について何も聞いていない場合は、亡くなった人にはもう聞けませんので、調べるのに大変苦労します。よって、私もそうですが、高齢になったら、エンディングノート(生前整理ノート)を作成して相続財産を記載するなどしておくことを強くお勧めします。

③法定相続人は誰になるのか確定しましょう。これは被相続人や相続人の戸籍謄本を入手して確定しなければなりません。以前は、すべての戸籍謄本を取得するにはかなりの時間がかかりましたが、令和6年3月1日から近くの市町村役場(区役所)で一括して取得できる広域交付制度が始まっていますので、これを活用しましょう。市町村役場の戸籍担当者に事前に連絡して必要書類等を確認してから窓口に行きましょう。

上記の一般的なことを終えるだけでもかなりの時間がかかり、相続放棄ができる3か月を過ぎてしまう可能性がありますので、相続放棄を考えている場合は、速やかに行う必要があります。手続を早く済ませたいということであれば、士業など専門家に依頼することを検討しても良いと思います。

以下は、相続放棄をする場合の注意点を記載します。

相続放棄が認められるまでに、相続財産を処分(相続財産の中から相続債務を支払うことを含む)してしまうと相続を承認したものとして相続放棄が認められなくなる可能性があります。ちなみに、被相続人が住んでいた賃貸住宅の契約(賃借権も相続財産となります)を解約する行為も処分行為とされる可能性がありますので、仮に家主から賃貸借契約を解約してほしいと言われても、相続放棄をするから相続人ではなくなるので解約できない旨を伝え、家主から一方的(家賃未納の理由により)に賃貸借契約を解約してもらうようにするのが安全といえます。

また、相続人全員ではなく、一部の相続人が相続放棄をした場合、相続人の組み合わせによっては相続順位や遺産分割割合が変わる可能性はありますので、相続放棄をする場合は、他の相続人に連絡するのが良いと思います。

さらに、相続放棄をした人が管理している相続財産があれば、他の相続人に管理を引き継ぐ必要があります。また、相続債権者(被相続人に借金があった場合)から支払を求められた事実があれば、他の相続人に情報提供してあげることが必要と思います。

相続人全員が相続放棄をした場合、その後はどうなるのでしょうか。

相続人全員が相続放棄をする典型例としては、被相続人のプラスの財産よりマイナスの財産の方が多く、債務超過の状態にある場合と思われます。

その場合、相続人全員が相続放棄をしても、相続人が占有(管理)している財産がある場合は勝手に処分できず、そのプラスの財産とマイナスの財産の管理と整理(清算)を行う相続財産清算人に、その占有(管理)している財産を引き渡すまで適切に保存する義務があります。相続放棄をしても相続財産清算人に協力すべきこともありますので、直ちに一件落着というわけではありません。

相続財産清算人は、相続債権者などの利害関係人からの請求によって家庭裁判所が選任します。また、相続放棄をした人からも家庭裁判所に請求することもできます。

よって、債務超過が原因で相続人全員が相続放棄を選択する場合は、相続放棄の申述の受理期間である3か月を過ぎないように、早めに手続を進める必要がありますので、できれば相続財産清算人の経験がある弁護士または司法書士などの専門家にご相談することをお勧めします。